初めてのシンガポールスリングは実はRaffles Hotelではなかった。
たまたま入ったOrchardのPernakan Road(?)の入口にあるバーだった。
琥珀色のスピリッツにレモンスライスが一つ。オリジナルとは少し違うのかもしれない。
一口飲むとシンガポールの夜に漂う熱気が少し引いていくような気がする。
遠くで誰かの笑い声がする。少し奥まった飯店で酔っ払ったカップルが抱き合いながら一つのタバコを交互に吸っていた。ここだけバンコックのカオサン通りのような雰囲気がある。なぜだろう。
なぜだろう。そう思ってふと気がついた。店の後ろに続く坂道は途中で少し曲がり、夜には行き止まりになっているように見える。
このどこにも行けない行き止まりが、バックパッカーもどきの怠惰な雰囲気を漂わせているのだろう。大声で笑い合い、抱き合い、路上でキスをする人々は、この行き止まりの場所を求めてさまよっているようにさえ思えてしまう。やがて朝が来て、その坂の白々しさ、幻のような夜、ハリボテのネオンが消えてしまうまでのつかの間を楽しむために。
シンガポールスリングの氷がカランと音を立てて溶けていく。
オーチャード通りはいつもの賑わい。夜が更けていき、僕の頭の中もアルコールに満たされていく。
そんな時間も、時には大切。
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